第53回青梅マラソンは2月17日、東京都青梅市で開催され、30キロと10キロの部にエントリーした16,669人のランナーが青梅路を駆け抜けた。
今大会では高橋尚子さん、スペシャルスターターを務めた野口みずきさん、ゲストランナーの福島和可菜さんらがスタート前に参加者たちを激励。沿道に詰めかけた72,000人の歓声もあり、大会は終始、盛大に行われた。
今回は、筆者がランナーとして参加した、30キロの部のレースレポートをお届けする。
当日は朝から晴天に恵まれ、ランナーにとって走りやすいマラソン日和となった。
気温が9度、湿度が32%、北北西の風が3メートル。寒すぎず、暑すぎずで風もほとんどないため、コンデションは良好と言える。
スタート地点周辺には多くの屋台が並んでいた。時間が刻々と迫るにつれ、周りの賑やかさも増していく。
開始30分前にはほとんどの参加者が集結し、各自で軽いランニングやストレッチなどを行いながら入念な準備をこなしていった。
そして、この日の午前11時30分、30キロに参加する13,178人のランナーたちが一斉にスタート。
スペシャルスターターの野口みずきさんは、スタート地点で手を振りながら「全力で頑張りましょう!私も応援しています」とマイクを片手にエールを送ると、スペシャルゲストの高橋尚子さんも「スタート前は風が寒いと思いますが、ゴールの先には笑顔が待っています!転倒に注意して走ってくださいね」と“Qちゃんスマイル”でランナーたちを激励した。
スタート直後はランナー渋滞によってあまりダッシュはできないため、序盤は歩く程度のペースが続いた。
そのまま2~3キロはウォーミングアップのような形で進んでいき、時間が経つにつれて徐々に前のランナーとの間隔があいていく。
それによって、スピードを出したいランナーは「待ってました!」と言わんばかりにペースを速め、どんどんと周りを追い抜いていった。
また、参加者の中にはポケットモンスターのピカチュウや、ウォーリーを探せといった人気キャラクターのコスプレをしながら走るランナーが多数。
沿道で応援する人も、そのコスプレ姿を見た瞬間「あっ、ピカチュウだ!頑張れー」と大喜び。その声援に対してランナーも手を振って対応するなどして、大会を盛り上げていた。
5キロを過ぎたあたりから、少しずつ町から遠ざかる。
日向和田駅~石神前駅周辺にそびえ立つ山々が見え始め、心地よい風が吹いていた。
ランナーたちも自分のペースをつかんでいき、順調にコースを進んでいく。
11キロを過ぎた頃、筆者は折り返し地点を通過したトップ集団と、ものすごい勢いですれ違った。
15キロが折り返し地点のため、この時点で差は約8キロ。実業団ランナーや、箱根駅伝を目指す大学生の凄まじいスピードを改めて感じた瞬間だった。
12~15キロまでは、急激な登り坂が続く。
その区間の高低差は、およそ31.2メートル。全体的にペースダウンし、大きく息を乱すランナーも出始めてきた。
だが逆に、折り返し地点を過ぎれば「あとは下りだ」という安心感が、「なんとかこの上り坂を乗り越えよう」と気持ちを奮い立たせてくれる。
そして、折り返し地点を過ぎ、一気に坂を下り始めたランナーたち。息を吹き返したようにペースが上がり、青梅街道の山道を駆け抜けていく。
途中では、高橋さんが大きな声で「頑張ってー」と応援しながらハイタッチ。疲労が溜まってきたランナーたちを、持ち前の明るさで鼓舞していった。
そして、下り坂にある2箇所の給水ポイントをうまく活用しながら、なんとか青梅マラソン「最大の難所」を乗り越えていった。
長い下り坂をクリアし、ようやく20キロ地点を通過するも、よろい橋と二俣尾駅前間にある高低差24.4メートルの上り坂が、ランナーたちの行く手を阻む。
このあたりから徐々に歩き出すものが増え、疲れ果てて座り込むものも出てきた。
筆者自身も、23~25キロ地点あたりから膝が悲鳴を上げ、思うように足が前に出なくなっていた。
それでも「絶対止まらない」「絶対歩かない」と自分に言い聞かせながら、体にムチを打っていたことを覚えている。
終盤はまさに“自分との勝負”だった。
それは、ここにいた全ランナーがそうだったのではないだろうか。
そして、ついに残り1キロ。
沿道からも「頑張れー!ラストスパート」と大きな声援が飛び交った。
このレースを通して、沿道の応援・サポートはランナーにとてつもない勇気を与えてくれるものだと、身をもって感じることができた。
各地点には、和太鼓での応援や「ロッキーのテーマ」を流してランナーを後押しするお父さん、そして小さくカットした果物やお菓子を手渡してくれる地元の方々。そういったたくさんの応援やサポートが、たくさんのランナーたちをここまで連れてきてくれたんだと、残り1キロ地点で走馬灯のように出来事が蘇った。
そしてゴール直前。
陽の光に照らされながら、最後の力を振り絞ってラストスパートをかけるランナーたち。
先に到着していた高橋さんと最後にハイタッチを交わし、ついにゴールの時を迎えた。
ランナーたちは、つらさと苦しみを乗り越え、走り切った安堵と喜びに包まれていた。
筆者も初めてのマラソンだったが、フィニッシュラインを切った時の達成感は言葉では表せないほど大きかった。
「完走できた」という自信は、走ることはもちろん、今後の人生にとっても大きな“財産”になる。
マラソンは、それほど“一つのことを成し遂げることの大切さ”を教えてくれるものだったのだ。
ゴールゲートをくぐった後には、完走記念のメダルと「VAAM」のドリンク、そしておにぎりがもらえるサービスも。
加えて、プロカメラマンによる写真撮影も行われ、後日、株式会社フォトクリエイトが運営するインターネット写真サービス「オールスポーツコミュニティ」にて販売。レース中もゼッケン番号ごとに撮影されており、参加者全員が自分の写真を購入することが可能だ。
写真はさまざまな大きさで販売されており、ポスターやキーホルダー、さらには額に入れて購入することもできるため、参加者にとっては嬉しい限りだろう。
無事に終えた第53回青梅マラソン。30キロコースには1,3178人が参加し、4時間以内での完走者数は12,274人、完走率は約93.2%とほとんどのランナーが最後まで走りきることができた。
実際に走ってみて感じたコースの特徴としては、やはり大きな高低差にある。
中盤の急な上り坂もそうだが、フィニッシュ地点と折り返し地点の高低差は実に85.8メートル。この高低差を克服できるかが、このコースを攻略するカギと言える。
とはいえ、綺麗な山並みや空気の美味しい林道の中を走る青梅市によるマラソンは、本当に清々しく、気持ちがいいものだった。地元の方々の温かみも感じられるため、次回のレースで走ろうか検討している方には、ぜひ来年参加していただきたい。
文・写真:佐藤 主祥